第22回整数論サマースクール『非可換岩澤理論』は
参加者の皆様を始め多くの方々から多大なご協力及びご支援を賜わり、
2014年9月1日に無事閉会を迎えることが出来ました。
世話人並びに講演者一同より心から御礼申し上げます。
古今和歌集 巻十七 雑歌上 870
岩澤健吉 Kenkichi Iwasawa に依る円分拡大体のイデアル類群の統一的な研究に端を発する岩澤理論 Iwasawa
theory は、岩澤健吉自身の非常に独創的な研究の後に実に様々な形で一般化され、現代整数論の一大分野を形成しています。特に、岩澤理論に於ける〈代数的不変量〉である 岩澤加群 (或いはより一般に セルマー群, セルマー複体)
と〈解析的不変量〉である p 進ゼータ関数 (或いは p 進 L 関数) が p 進の世界で本質的に一致する ことを主張する
岩澤主予想 Iwasawa main conjecture は、整数論の数ある予想の中でも取り分け美しく神秘的なものの一つとして現在に至るまで
そんな岩澤理論の様々な一般化の中でも特に
非可換岩澤理論に於いては、《非可換》ならではの問題や困難を乗り超えるために通常の整数論ではあまり用いられない手法や概念が数多く導入されています。それ故
将来岩澤理論の研究に従事することを志していらっしゃる方、実際に岩澤理論を勉強
※冒頭の和歌について
【歌意】陽の光はたとえ薮でさえも分け隔てなく降り注ぐので、
【注釈】2011年にドイツのミュンスター大学で行われた非可換岩澤理論ワークショップの報告集
[CSSV12] の巻頭で
Coates が引用した和歌。詞書には「
- ∗1) 非常に慣習的な言い回しではありますが、前者の意味での『非可換岩澤理論』を Noncommutative Iwasawa theory, 後者の意味での『非可換岩澤理論』を Non-abelian Iwasawa theory (“非アーベル岩澤理論”) と呼ぶことが多いようです。
- ∗2) 特に David Burns の仕事や、非可換 Brumer(-Stark) 予想への応用として Andreas Nickel の仕事が挙げられます。非可換 Brumer(-Stark) 予想に関しては、一昨年のサマースクールの報告集 [SS12] に野村次郎さんが非常に分かりやすい解説を書いていらっしゃいますので、興味のある方は是非ご参照下さい。
更新履歴
本ホームページには第22回整数論サマースクールに関する情報を随時掲載していく予定ですので、サマースクールへの参加を検討されていらっしゃる方は定期的に確認していただきますようお願いします。
Q & A よくあるご質問
Q. (非可換) 岩澤理論ってそもそも何なの?
本ウェブページの冒頭言をご覧下さい。
Q. 普通の岩澤理論も知らないのに、いきなり『非可換』とか言われても………
本サマースクールの最初の方で、総実代数体の古典的岩澤主予想の解説を行いますのでご安心下さい。その際にはあまり詳細には立ち入らず、岩澤主予想を演ずる〈代数側〉の主役である岩澤加群や〈解析側〉の主役であるp 進ゼータ関数がどのようなものか、それらを繋ぐ岩澤主予想が如何に神秘的で魅力的な予想であるかを強調して解説していただく予定です。その後、古典的な場合と比較しながら非可換岩澤主予想の定式化を勉強すると新たな発見があると思います。この機会に (古典的な場合も含め) 岩澤主予想の思想的背景を感じ取って戴ければ幸いです。
Q. 予備知識はどれくらい必要?
前半は体論 (特にガロワ理論やクンマー理論)、局所体の基礎事項 (p 進整数環、完備離散付値体等) 及び代数的整数論の基本的な知識 (総実体等の用語、大域類体論の主張等) を身につけていれば一通り (順を追って) 理解出来るプログラム編成にするつもりです。