Oura Church
A Picture of Dutch Lady

阿蘭陀女の図
長崎絵 (版画),18世紀頃
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大浦天主堂

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講演内容

講演概要

サマースクールで行われる講演のアブストラクトの一覧です。印刷用の pdf ファイルはこちらからどうぞ→

プレスクール: 「関数体の数論」の世界への誘い     原 隆 (津田塾大学)

本サマースクールの舞台である「関数体の数論」の世界を展望します.有理整数環と (体上の) 1変数多項式環の類似の話題から始め,所謂(いわゆる) (標数0の) 整数論の世界と比較させつつ,正標数関数体特有の現象については特に強調しながら「関数体の数論」の世界の設定を概観します.その後,代数的整数論の古典理論と対比させ,正標数の世界ではどのような展開が期待されるかを考察することで,サマースクール前半の主役である Carlitz 加群や Drinfeld 加群を導入する動機付けを行います.道中で,サマースクール本編で用いられる大域体の拡大にまつわる基礎概念等も随時準備してゆく予定です.
 全体を通してあまり細部には立ち入らず,標数0の世界と正標数の世界を俯瞰的に対比させる視点を強調することで,参加者の皆様が「関数体の数論」に秘められたエキゾティックな魅力に惹かれ,サマースクール本編への参加意欲を掻き立てられるようなひとときとなれば,と考えています.

参考文献: [Ros02]; 〔以下標数0〕 [Neu92]

Carlitz 加群の定義と解析的側面 (1), (2)     原田 遼太郎 (東京理科大学)

本サマースクールで取り扱う Drinfeld 加群を理解する準備として,階数 $1$ のケースとして知られる Carlitz 加群について紹介する.この講演では最初に,skew polynomial ring などの関数体特有の基本的な記号や概念を導入する.その後,Carlitz [Car35] および Goss [Gos98] に基づいて Carlitz 指数関数(指数関数の関数体類似)を導入し,その関数等式から定まるある非自明な $\mathbb{F}_q[t]$-作用によって Carlitz 加群が定義されることを解説する.解説の過程で,Carlitz 指数関数の級数表示,積表示や,Carlitz 周期($2\pi \sqrt{-1}$ の関数体類似)についても説明を行う予定である.

参考文献: [Car35], [Gos98], [Ros02], [Pap23]

Carlitz 加群の代数的側面 (1), (2)     木村 巌 (富山大学)

主に,Hayes [Hay74] に基づき,有限体上の1変数有理関数体の「明示的な」類体論を構成する. その基礎として,Carlitz 加群(階数 1 の Drinfeld 加群)を代数的に導入し,その等分点を有理関数体に添加した「円分関数体」の数論的な性質を,円分体の場合と対比させつつ,詳細に解析する. ついで,有理関数体の最大 Abel 拡大体となる体を構成し,有理関数体のイデール群の構造を調べた後,類体論の相互法則写像を明示的に与える.

参考文献: [Hay74], [Gos98], [Ros02], [Pap23]; 〔以下標数0〕 [数論I] (特に定理5.10, § 8.1), [Neu92] (特に Kapitel V (1.10) Theorem, Kapitel VI (6.7) Satz)

楕円曲線の重要事項の概説     臺信 直人 (九州大学)

本サマースクールの主要なトピックである関数体上の Drinfeld 加群は,代数体上の楕円曲線の類似物である.Drinfeld 加群の定義や性質を楕円曲線の場合と比較することは,Drinfeld 加群を理解するうえで有用であると思われる.そこで,本講演では関数体上の対象との比較を念頭に置き,代数体上の楕円曲線に関する重要事項を概観し,後続の講演のための予備知識を準備する.具体的には,楕円曲線の定義から始め,複素数体上の解析的一意化,および代数体上の楕円曲線に対する Mordell–Weil の定理を紹介する.また,楕円曲線に付随する Galois 表現として Tate 加群を導入し,その分岐と楕円曲線の還元型とを関連づける Néron–Ogg–Shafarevich 判定法について説明する.

参考文献: 〔主に標数0〕[Sil86], [ST92], [DS05]

Drinfeld 加群の定義と解析的側面     浅山 拓哉 (東京科学大学)

t.b.a.

Drinfeld 加群の代数的側面 (1), (2)     沖 泰裕 (立教大学)

Néron–Ogg–Shafarevich 判定法の関数体類似について理解することを目標とする.前半では,Drinfeld 加群の還元の理論について概説する.特に,すべての正ランクの Drinfeld 加群は潜在的安定還元をもつことを紹介する.後半では,Drinfeld 加群に付随する Tate 加群を導入し,Drinfeld 加群の良還元が Tate 加群の分岐によって特徴付けられることを説明する.

参考文献: [Tak82], [Gos98]; 〔以下標数0〕[Sil86] (特に Section VII.7)

Drinfeld 加群に対する Mordell–Weil の定理 (1), (2)     長谷川 武博 (滋賀大学)

Drinfeld 加群に対する Mordell–Weil 型定理(以下,主定理)を解説します.この主定理は,楕円曲線の Mordell–Weil の定理の関数体類似で,その主張は,Drinfeld 加群の有理点のなす $A$ 加群は「有限のねじれ部分」と「可算無限階数の自由部分」の直和に同型であるというものです.楕円曲線の場合との相違点の一つは有限生成かそうでないかです.Drinfeld 加群の場合は有限生成ではありませんが,順(tame),つまり任意の有限階数の部分加群は有限生成です.
 講演の1コマ目は,主定理 ([Poo95, Th. 1]) およびその周辺の定理([Poo95, Th. 2] 等)を紹介し,それぞれの証明のアイデアにふれます.比較のために楕円曲線の Mordell–Weil の定理の証明のアイデアについてもコメントする予定です.2コマ目で,主定理を出来るだけ丁寧に証明します.証明のキーは大域的高さ関数という高さ関数です.大域的高さ関数の定義や性質([Poo95, Prop. 5] 等)については出来るだけ詳細に扱います.もう一つのキーは有限生成アーベル群の基本定理の「可算無限版」([Poo95, Prop. 10])です.こちらについては証明せず認める予定です.

参考文献: [AM69], [Poo95], [Gos98]; 〔以下標数0〕[Sil86] (特に Chapter VIII)

Drinfeld 加群の有理ねじれ点について     石井 竣 (京都大学数理解析研究所)

Mordell–Weil の定理の Drinfeld 加群版から,$\mathbb{F}_{q}(t)$ 上の Drinfeld 加群に対して,その有理ねじれ点全体の集合は有限である.Poonen はさらに,この集合の大きさは階数 $r$ のみに依存する定数によって一様に抑えられると予想した (普遍上界予想).また階数 $r=2$ の場合には,Schweizer がより精密な形の予想を提出した.本講演ではこれらの予想とその進展について,楕円曲線の場合と比較しながら概説する.また後者の予想に関する Pál,Armana および講演者による結果とその証明の概略についても,時間の許す限り説明する.

参考文献: [Sch03], [Pál10], [Arm12], [Ish22]; 〔以下標数0〕[Maz78]

Drinfeld 加群から t-motive へ     田口 雄一郎 (東京科学大学)

以下の事項について解説する:
  ・$t$-motive と abelian $t$-module の定義
  ・$t$-motive を導入する動機
  ・Drinfeld 加群から $t$-motive を構成する方法
  ・Galois 表現との関係
  ・Dieudonné 加群等との類似
  ・古典的な motive との比較,Tate 予想との関係
  ・$t$-motive と shtuka の関係
  ・微分方程式や差分方程式との類似
  ・周期への応用
  ・L 函数への応用

参考文献: [Dri77b], [And86], [Gos96] (Chapter 5, 6), [Papa08]

A-motive の定義と性質     奥村 喜晶 (東洋大学)

本講演では,体とは限らない一般の $\mathbb{F}_q$ 代数上で定義された $A$-motive という対象を導入し,その性質を概観する.$A$-motive は,前日までの講演で取り扱ってきた Drinfeld 加群の双対的な存在であり,実際,Drinfeld 加群の圏から $A$-motive の圏への忠実充満な反変関手が存在する.
 講演では,$A$-motive から定まる3種の実現 ($\mathfrak{p}$ 進,Betti,de Rham) を紹介し,それらの比較同型や Drinfeld 加群との関係を説明する.また,良還元を持つ $A$-motive の $\mathfrak{p}$ 進実現 (Galois 表現) が “クリスタリン的” に振舞うことを紹介し,午後の講演で取り扱う Hodge–Pink 理論への橋渡しを行う.

参考文献: [And86], [Gos98], [Gar02], [HJ20]

p 進 Hodge 理論からの準備     石田 哲也 (東北大学)

本講演では,引き続く高田氏と宮谷氏の講演で議論される Hodge–Pink 理論の雛形となる混標数の理論,$p$ 進 Hodge 理論の一部をお話しします.そもそも $p$ 進 Hodge 理論では,$p$ 進表現,すなわち $p$ 進数体の絶対ガロア群が作用する $\mathbb{Q}_p$ 線形空間を扱います. そして主に,$p$ 進表現を様々な線形データを対応させることで調べたり,楕円曲線に付随する Tate 加群のような数論幾何的な出自を持つ $p$ 進表現の場合にこれらの線形データがどういう意味を持つか(「うまく持たせられているか」)を研究します.
 本講演ではこの $p$ 進 Hodge 理論のうち,午後の講演で取り扱われる等標数の理論,Hodge–Pink 理論で踏襲される,crystalline 表現〔クリスタリン表現〕に関する議論を紹介します.具体的には,$p$ 進表現の crystalline 性を説明し,この性質を持つ $p$ 進表現(crystalline 表現)へのフィルトレイション付き $\varphi$ 加群という線形データの対応付け,およびこの対応で両者が等価(圏同値)になることを述べた Colmez–Fontaine の定理(「許容$=$弱許容」)を紹介します.加えて,この線形データの意味についても多少触れられればと思っています.
 細部にはあまり立ち入らず,午後の Hodge–Pink 理論の議論に踏襲される形式的な流れを重視してお話ししたいと考えています.

参考文献: [志甫16]; 〔以下標数0〕[辻99], [中村10], [FO22+]

Hodge–Pink 理論と等標数クリスタリン表現 (1), (2)     高田 芽味 (新居浜工業高等専門学校)

完備離散付値環上の局所 shtuka を導入する.これは午前中の奥村氏の講演で導入された良還元を持つ $A$-motive の局所版と見なせる対象である.Hodge–Pink 理論,すなわち石田氏により紹介された標数0の $p$ 進 Hodge 理論の等標数類似は,現状 ($\mathfrak{p}$ 進局所ガロア表現ではなく) 局所 shtuka に主眼を置いて展開される.
 この局所 shtuka に対する $\mathfrak{p}$ 進 Tate 加群や de Rham 実現を定義し,$A$-motive に対し定義された同様の実現と整合的であることを見る.さらに,次の3つの定理を紹介し,証明についても時間の許す限り説明する:
  1) Tate 加群が自由かつその階数がもとの局所 shtuka の階数と一致すること,
  2) étale–de Rham 比較同型,
  3) 局所 shtuka に対し,その Tate 加群をとる関手が忠実充満であること.
 その後,等標数の $\mathfrak{p}$ 進局所ガロア表現がクリスタリンであることを定義する.また,重要な具体例である Carlitz motive に付随する局所 shtuka や,$\mathfrak{p}$ 進円分指標,その周期である $\ell_+$ (これらは宮谷氏の講演でも活躍する) などについても,随所で触れる.

参考文献: [HK20] (メインの文献; 特に § 2, § 4), [Har09], [Har11], [Kim09]

Hodge–Pink 理論と等標数クリスタリン表現 (3), (4)     宮谷 和尭 (徳島大学)

本講演は高田氏の講演の続きである.本講演ではまず,局所 shtuka の crystalline 実現を定義し,$\mathfrak{p}$ 進実現(Tate 加群)および de Rham 実現との間の比較定理を紹介する.そのために,高田氏の講演で導入された種々の対象を踏まえ,等標数の適切な「周期(環)」を定義して用いることとなる.その後は,Colmez–Fontaine の定理(「許容=弱許容」)の等標数類似の概説を目標とする.すなわち,まず $p$ 進 Hodge 理論におけるフィルトレイション付き $\varphi$ 加群の役割を持つ「Hodge–Pink 構造つき $z$-isocrystal」を導入し,その弱許容性・許容性の概念を定義する.そして,両者の同値性について可能な限り解説する.

参考文献: [HK20] (特に § 5, § 6), [Har09], [Har11]

Taelman 類群と類数公式     坂本 龍太郎 (筑波大学)

本講演では,Taelman の論文 Special L-values of Drinfeld modules の内容を解説する.まず,Drinfeld 加群に対して Taelman が導入した Taelman 類群およびレギュレーターの定義を説明し,これらを用いて定式化される Taelman の類数公式を紹介する.続いて,この類数公式が跡公式の帰結として導かれることを示す.最後に,跡公式の証明を時間の許す限り解説する.

参考文献: [Tae12]; 〔以下標数0〕 [Neu92] (特に Kapitel VII (5.11) Korollar), [Jar14] (特に Section 10.4)

Taelman 類群に関する岩澤類数公式     片岡 武典 (東京理科大学)

Drinfeld 加群に対して定まる Taelman 類群は,代数体のイデアル類群と類似の性質を持つと期待されています.例えば坂本氏の講演で紹介されたように,Taelman 類群に関する解析的類数公式の類似が知られています.一方,岩澤理論における基本的な公式として,代数体の $\mathbb{Z}_p$ 拡大に対してイデアル類群の漸近挙動を記述する岩澤類数公式が知られています. 本講演では,正標数大域体の $\mathbb{Z}_p$ 拡大に対する Taelman 類群の岩澤型漸近挙動を紹介します (奥村氏との共同研究に基づきます).

参考文献: [Tae10], [Tae12], [Hig21], [KO26]; 〔以下標数0〕[Iwa59], [Was97]

参考文献

‡                 ‡                 ‡

弥太樓本館 展望デッキからの遠景

scenary
第33回 (2026年度) 整数論サマースクール   『関数体の数論』 | 背景画像 雲仙ツツジ (長崎県の県花)