本講演では上記の示唆に基づく実践例として、最初にマーク・カラーとピーター・B・シャーレンによる本質的曲面の構成がブリュアー-ティッツの建物の理論を用いて拡張出来ることを紹介します (東京工業大学 北山貴裕との共同研究)。時間が許せば、本質的曲面や3次元多様体の基本群の作用に関する展望や問題について数論的立場から論じたいと思います。
原 隆:
CM体に付随するセルマー群の概可除性と多変数岩澤主予想の円分特殊化について,
早稲田整数論セミナー,
早稲田大学, 2013年 11月 22日.
参考資料
アブストラクト: 多変数岩澤主予想の特殊化とは,多変数主予想の等式の或る変数に「〈値を代入〉して〈文字を消去〉する操作」であり,最近のクリストファー・マクレーン・スキナーとエリック・ウルバンによる楕円保型形式の岩澤主予想についての結果 (Invent. Math., 2013) に於いて繰り返し用いられていることからも窺える様に,岩澤理論の研究の様々な局面で頻繁に用いられる重要な手法である.一般に (岩澤主予想の〈代数サイド〉の主役を演ずる)
特性イデアルの概念が特殊化という操作に対して全く整合的に振る舞わないため,多変数岩澤主予想の特殊化に際しては見かけ以上に繊細な考察が要求され,特にセルマー群の概可除性の問題が大きく関わってくることが古来から観察されていた.
本講演では,先ず虚二次体の (A0) 型量指標に付随する多変数岩澤主予想を例に挙げつつ,セルマー群の概可除性の問題が岩澤主予想の特殊化に対して如何様にして関与するかについて概説する.その後,CM体の多変数岩澤主予想を逐次的に特殊化することで虚数乗法を持つヒルベルト保型形式に対する円分岩澤主予想が
(一定の仮定の下で) 導かれることを,特に特性イデアルの特殊化の側面に焦点を当てながら解説する [落合理 (大阪大学) との共同研究].
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アブストラクト: カラー-シャーレン理論は3次元位相多様体に含まれる本質的曲面の構成に関する古典的理論であり,低次元トポロジーの分野に於いて数々の強力な結果を生み出す原動力となっている.そこでは指標多様体の幾何学や〈樹木〉の理論等代数的な手法が縦横無尽の活躍を演じており,整数論的観点からも非常に興味深い理論であると言えよう.本講演では古典的なカラー-シャーレン理論を簡単に振り返った後,ブリュアー-ティッツの〈建物〉の理論を用いた高次元表現への拡張並びに数論的位相幾何学の観点からの応用 (へ向けた取組み) について論ずる [北山貴裕 (東京大学) との共同研究].
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アブストラクト: カラー-シャーレン理論は,3次元多様体に含まれる「本質的曲面」と呼ばれる曲面を組織的に構成するために創設された低次元トポロジーに於ける最も重要な古典理論の一つである.そこでは基本群のSL(2) 表現のモジュライ空間の幾何学やバス-セール理論といった極めて代数的/代数幾何的な手法が効果的に用いられており,代数的な観点からも非常に興味深い理論であるといえよう.
本講演では古典的なカラー-シャーレン理論について (主に代数的な議論の部分を) 簡単に振り返った後,高次特殊線型群 SL(n) に付随するブリュアー-ティッツの建物を用いたカラー-シャーレン理論の高次表現への拡張について論じる.時間が許せば数論的位相幾何学の観点から提起される諸問題についても言及したい [北山貴裕 (東京大学) との共同研究].
原 隆: 虚数乗法を持つ保型形式の円分岩澤主予想について,
HAG (ホモトピー代数幾何) セミナー, (非公式講演)
京都大学数理解析研究所, 2013年 6月 21日.
アブストラクト: 虚数乗法を持つ尖点形式の円分岩澤主予想を題材に,多変数岩澤主予想の“特殊化”の際に生じる技術的な困難について論じる.講演では基本的に楕円尖点形式の場合を扱い,虚数乗法を持つ楕円尖点形式の円分岩澤主予想と虚二次体の (二変数) 岩澤主予想の関係について解説する.時間が許せば虚数乗法を持つヒルベルト尖点形式の円分岩澤主予想に関する結果にも言及したい [落合理 (大阪大学) との共同研究].
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アブストラクト: ものの〈かたち〉を追究するトポロジーという学問に於いて「多様体をより単純な〈かたち〉の多様体に分解する」という手続きが欠かせないことは言うまでもないが,特に3次元多様体のトポロジーでは本質的曲面に沿った分解が重要な役割を演ずる.1983年にマーク・カラーとピーター・シャーレンは3次元多様体に含まれる非自明な本質的曲面を組織的に構成する理論を構築したが,その手法は指標多様体という代数多様体 (基本群の2次元表現のモジュライ) の幾何学とハイマン・バス,ジャン-ピエール・セールによる樹木の理論を組み合わせた極めて代数的なものであった.本講演では古典的なカラー-シャーレン理論を簡単に振り返った後,フランソワ・ブリュアーとジャック・ティッツの建物の理論を用いた高次表現多様体への拡張,並びに (バリー・メイザー,森下昌紀の意味での) 数論的位相幾何への応用 (に向けた取組み) について解説する [北山貴裕 (東京大学) との共同研究].
原 隆: 総実代数体の岩澤主予想及びその非可換化について,
HAG (ホモトピー代数幾何) セミナー, (非公式講演)
名古屋大学, 2013年 2月 23日.
アブストラクト: 非専門家向けに総実代数体の非可換岩澤主予想について解説講演する.始めに原型である有理数体の岩澤主予想の定式化を紹介する.その後主予想の非可換化に於いて何が障碍となるかを考察し,その困難を如何にして回避するかについて説明を加える.
時間が許せばデイヴィッド・バーンズ及び加藤和也の〈貼り合わせ〉による非可換岩澤主予想へのアプローチを紹介し,比較的簡単な非可換拡大の場合に主予想の証明方針を解説したい.
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アブストラクト: 岩澤主予想とは,セルマー群のポントリャーギン双対の特性イデアルという〈代数的な不変量〉と
p 進 L 関数と言う〈解析的な不変量〉が
p 進の世界で本質的に一致することを主張する極めて神秘的な予想であり,整数論の華形の一つとも言えよう.楕円保型形式に対する岩澤主予想の研究は近年加藤和也,クリストファー・スキナー,エリック・ウルバン等に依り劇的な進展を迎えているが,その一方で虚数乗法を持つ楕円保型形式に対しては「付随する量指標のテータ持ち上げを通じて虚二次体の岩澤主予想と結びつける」と言う,一般の場合と比較するとかなり様相の異なる方針から主予想にアプローチ出来ることがカール・ルービンや加藤和也等に依って観察されていた.本講演では後者の方針を虚数乗法を持つヒルベルト尖点形式に一般化し,CM体の岩澤主予想と関係づけることに拠って虚数乗法を持つヒルベルト尖点形式の円分岩澤主予想に取り組む試みについて解説する.時間が許せばCM体の主予想を特殊化する際に生ずる技術的困難についても言及したい [落合理 (大阪大学) との共同研究].
原 隆: 論文紹介 (第4部),
玉原数論幾何研究集会 2011,
東京大学玉原国際セミナーハウス, 2011年 6月 1日.
紹介論文: Kazuya Kato, p-adic Hodge theory and values of
zeta functions of modular forms, in: Cohomologies p-adiques et
applications arithmétiques III, Astérisque 295 (2004) 117--290.
ベイリンソン-加藤元に関するゼータ値公式の証明について担当しました.
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アブストラクト: 総実代数体の非可換岩澤主予想は,アンドリュー・ワイルズが証明した総実代数体の古典的な岩澤主予想の〈非可換〉拡張であり,加藤和也,ユルゲン・リッター,アルフレッド・ヴァイス,マヘシュ・カクデ及び講演者の仕事に基づいて,最終的に2010年にリッター-ヴァイス並びにカクデに依って独立に証明されるに至った.
本講演では最初に総実代数体の非可換岩澤主予想の定式化を行い,その定式化が古典的な岩澤主予想の〈非可換〉拡張と見做せることを解説した後に証明の大雑把な流れについて概説する.時間が許せば同変玉河数予想への応用やこれからの展望についても可能な限り触れたい.
原 隆:
On non-commutative Iwasawa main conjecture
for totally real number fields,
岩澤理論ミニ研究集会,
京都大学 大学院理学研究科, 2011年 4月 8日.
アブストラクト: We will sketch the proof of
non-commutative Iwasawa main conjecture for totally real number fields
and explain key ideas in the proof based on the works of Kazuya Kato,
David Burns, Ritter-Weiss, Mahesh Kakde and the speaker.
We especially focus on how induction works in the construction of
the p-adic zeta functions for non-commutative p-extensions.
原 隆:
Inductive construction of the p-adic zeta functions for non-commutative p-extensions of exponent p of totally real fields
(総実代数体の羃指数p型非可換p拡大に対するp-進ゼータ関数の帰納的構成),
博士論文発表会 (論文審査),
東京大学, 2011年 2月 4日.
原 隆:
非可換岩澤主予想及び関連する話題について,
早稲田整数論セミナー,
早稲田大学, 2011年 1月 14日.
アブストラクト: 総実代数体の非可換岩澤主予想がほぼ一般的に解決されたことを記念 (?) して,非可換岩澤理論及び関連する話題について主予想を中心に解説する.
非可換岩澤主予想の定式化及び古典理論との関係,総実代数体の場合の証明の方針,ゼータ関数の特殊値 (玉河数予想) との関係及び今後の展望・課題などについて,講演者の結果及び取組みも交えつつ紹介したい.
原 隆:
総実代数体の羃指数p型非可換p拡大に対するp-進ゼータ関数の帰納的構成,
代数学コロキウム,
東京大学, 2010年 12月 22日.
アブストラクト: 総実代数体の非可換岩澤理論に於けるp-進ゼータ関数の構成及び主予想の証明について,特別な場合に解説する.
総実代数体の非可換岩澤主予想は,David Burns 及び加藤和也による「ゼータ関数の貼り合わせ」の手法を用いて加藤,Mahesh Kakde
及び講演者によって特別な場合に証明されてきた (Jürgen Ritter,
Alfred Weiss も異なる定式化の下で主予想が成立する例を構成している).本講演では拡大のガロワ群がp進整数環と羃指数pの有限群の直積と同型な場合に,Burns-加藤の手法と帰納的な議論を組み合わせることで非可換岩澤主予想が証明できることを紹介する.
なお,総実代数体の非可換主予想は,2010年に Ritter-Weiss 及び Kakde によって一般の場合にも解決されていることを注記しておく.
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Takashi
Hara:
Inductive construction of non-commutative p-adic zeta functions for totally real number fields,
Iwasawa 2010,
フィールズ研究所 (カナダ, トロント) 2010年 7月 5日.
アブストラクト: We will discuss how to construct
the p-adic zeta functions
for non-commutative pro-p extensions of totally real number fields.
First we deal with the cases of exponent p as toy models, and then
we will discuss general cases by using Mahesh Kakde's computation
of Whitehead groups of Iwasawa algebras. We will also
explain the relation between our strategy and the additive congruences
presented by Jürgen Ritter and Alfred Weiss.
原 隆:
総実代数体の非可換p進ゼータ関数の帰納的構成について,
岩澤理論セミナー,
慶応義塾大学, 2010年6月26日.
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アブストラクト: モチーフの L-関数の特殊値に関するブロック-加藤の玉河数予想は岩澤主予想の「降下」(descent) を介して証明されることが期待されており, 実際に特別なケースではこの方針に則って玉河数予想が解決されている. 本講演では, 近年デイヴィッド・バーンズ (David Burns) とオトマール・ヴェンヤコブ (Otmar Venjakob) に依って確立された非可換拡大に対する降下理論を用いることで, 非可換拡大に於いても岩澤主予想が (非可換) 玉河数予想を導くことをクリティカルなテイトモチーフの場合に紹介し, 非可換岩澤理論の玉河数予想への応用について考察する.
(補足プリントには若干の修正を加えました)
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アブストラクト: The analogy between
Reidemeister torsion theory and Iwasawa
theory has been pointed out by many people, but in general the proof of
the Iwasawa main conjecture is much more difficult than that of topological
analogue (even the construction of the p-adic zeta function is
not easy at all!). In this talk I will explain such phenomena and propose
the strategy to prove the Iwasawa main conjecture in non-commutative
coefficient cases.
原 隆:
Non-commutative Iwasawa main conjecture for totally real
number fields and induction method,
神戸整数論集会,
神戸大学, 2010年 1月 13日.
アブストラクト: After brief review of
the formulation of the non-commutative
Iwasawa main conjecture for totally real number fields, we discuss how to
construct the p-adic zeta functions and verify the conjecture via congruences
among abelian p-adic zeta functions. If time permits, we will explain
that non-commutative Iwasawa main conjecture should imply parts of
the equivariant Tamagawa number conjecture (or "non-commutative Tamagawa
number conjecture" in the sense of Fukaya and Kato) by virtue of
Burns-Venjakob's descent theory.
原 隆:
Iwasawa theory of totally real fields for
certain non-commutative p-extensions,
代数的整数論とその周辺,
京都大学数理解析研究所, 2008年 12月 12日.
原 隆: 総実代数体の p-拡大に対する非可換岩澤主予想について,
代数学セミナー,
九州大学, 2008年 10月 24日.
アブストラクト: 2005 年の John Coates 等に依る非可換岩澤主予想の定式化の後, 総実代数体のそれほど複雑でない非可換拡大に対しては主予想が成立する例が加藤和也, Mahesh Kakde 等によって構成されており, 彼らの構成を拡張することは非可換岩澤理論の研究において非常に重要な課題である. 本講演では, 「非可換ゼータ関数の帰納的構成」という戦略により, 主予想が成立する拡大のクラスを拡張する試みについて紹介する. Coates-Fukaya-Kato-Sujatha-Venjakob 流の非可換岩澤主予想の簡単な紹介から始めるつもりであるが, 今回は p-進ゼータ関数の帰納的な構成の概略について特に重点的に話したい.
原 隆:
総実代数体の非可換岩澤理論について (
ポスター発表),
第16回整数論サマースクール 「保型 L-関数」
ポスターセッション,
幕張メッセ 国際会議場, 2008年8月18日.
原 隆:
Iwasawa theory of totally real fields for certain non-commutative p-extensions,
第7回広島整数論集会,
広島大学, 2008年 7月 24日.
アブストラクト: Recently, Kazuya Kato
has proven the non-commutative Iwasawa
main conjecture (in the sense of Coates, Fukaya, Kato, Sujatha and Venjakob)
for non-commutative Galois extensions of “Heisenberg type”
of totally real fields, using integral logarithmic homomorphisms introduced
by Oliver and Taylor. His method was based on Burns' outstanding idea,
“construct the p-adic zeta functions for non-commutative extensions by
patching p-adic zeta functions associated to commutative subextensions.”
In this talk, we apply Kato's method (and Burns' technique) to certain
non-commutative p-extensions which are more complicated than those of
Heisenberg type, and sketch the proof of the main conjecture for them.
Takashi
Hara:
Iwasawa theory of totally real fields for
non-commutative p-extensions of strictly upper triangular type,
Iwasawa 2008,
イルジー修道院 (ドイツ, アウグスブルク) 2008年 7月 3日.
アブストラクト: Recently, Kazuya Kato has proven the Iwasawa
main conjecture (in the sense of Coates, Fukaya, Kato, Sujatha and Venjakob)
for non-commutative Galois extensions of &ldquo:Heisenberg type”
of totally real algebraic fields. In this talk, we apply Kato's method
to non-commutative p-extensions of “strictly upper triangular type.”
This is another generalization of Kato's result than M. Kakde.
原 隆:
Noncommutative Iwasawa theory of totally real fields,
岩澤理論セミナー,
慶応義塾大学, 2008年5月10日.
原 隆:
総実代数体のある非可換 p-拡大に対する岩澤理論,
早稲田整数論セミナー,
早稲田大学, 2008年 5月 9日.
アブストラクト: 2005 年に Coates, Fukaya, Kato,
Sujatha, Venjakob によって虚数乗法を持たない楕円曲線に対し非可換岩澤主予想が定式化されました. その後, 加藤和也氏は「非可換主予想を可換な拡大の主予想に帰着する」という Burns 氏の画期的なアイデアに基づいて, 総実代数体のハイゼンベルク型と呼ばれる非可換拡大に対し主予想を証明しています. 本講演では, 加藤氏の証明手法に基づいた, より複雑なある非可換 p-拡大に対する主予想の証明方法を解説します. 講演では非可換岩澤主予想の定式化及び Burns の手法の解説から始め, 特に加藤氏のハイゼンベルク型拡大では現れなかった困難な部分について時間の許す限り詳しくお話ししたいと思います.
原 隆:
Iwasawa theory of totally real fields for certain
non-commutative p-extensions,
代数学コロキウム,
東京大学, 2008年 4月 30日.
アブストラクト: Recently, Kazuya Kato
has proven the non-commutative
Iwasawa main conjecture (in the sense of Coates, Fukaya, Kato,
Sujatha and Venjakob) for non-commutative Galois extensions
of “Heisenberg type” of totally real fields, using integral logarithmic
homomorphisms. In this talk, we apply Kato's method to certain
non-commutative p-extensions which are more complicated than those
of Heisenberg type, and prove the main conjecture for them.
原 隆:
総実代数体の非可換岩澤理論の展開,
第5回城崎新人セミナー,
兵庫県豊岡市立城崎健康福祉センター, 2008年 2月 21日.
アブストラクト: 近年 Coates 等によって非可換拡大に対する岩澤主予想が代数的 K-理論を用いて定式化され,加藤和也等によって特別な拡大に対して主予想が成立することが示されてきました. 本講演では, この非可換岩澤主予想を紹介し, 主予想の証明を可換な拡大の主予想に帰着させる Burns の画期的な手法を紹介します. 時間が許せば, 講演者が実際に Burns の手法を用いて得た結果についても紹介したいと思います. 非可換岩澤理論の魅惑の世界を少しでも感じ取っていただければ幸いです.