Iwasawa Theory in Tokyo 2026 Summer
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講演概要
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楕円曲線の木田の公式とその応用
足立 大雅 (九州大学)
楕円曲線の木田の公式は,基礎体の $p$ 冪拡大に伴う Selmer 群や $p$ 進 $L$ 関数の岩澤不変量の変化を記述するものであり,八森–松野をはじめ多くの論文で研究されてきた.その中でも $p=2$ の木田の公式は,証明に技術的困難や繊細な議論が伴うものの,楕円曲線の $2$ 次ツイストと相性が良く,いくつかの応用が知られている.本講演の前半では木田の公式の先行研究を概観し, 後半では $p=2$ の木田の公式やその応用について,講演者の最近の結果も交えながら紹介する予定である.
A Proof of Ferrero–Washington’s Theorem by Sinnott (Ⅰ)
岩澤 力生 (東京理科大学)
$p$ を素数とする.イデアル類群の岩澤理論における未解決問題の $1$ つに $\mu=0$ 予想と呼ばれる予想がある.それは任意の代数体に対して,その円分 $\mathbb{Z}_p$ 拡大の岩澤 $\mu$ 不変量は常に $0$ であることを主張する.この予想に関して,Ferrero と Washington はアーベル代数体に対して $\mu=0$ 予想が成り立つことを示した (Ferrero–Washington の定理).その後,Sinnott は $p$ 進測度を用いた別証明を与えた.本講演では,Sinnott の証明に必要となる $p$ 進測度に関する準備を行い,別証明の概要を紹介する.また,本講演内で証明を省略するいくつかの事実については,8/4 の小林氏の講演において詳しい証明が与えられる.
反円分拡大における CM 楕円曲線の Tate–Shafarevich 群の漸近公式について
太田 和惟 (大阪大学)
Mazur らの研究により,楕円曲線の Tate–Shafarevich 群の $\mathbb{Z}_p$ 拡大における漸近的な振る舞いは,$p$ が通常的な場合にはよくわかっている.一方,$p$ が非通常的な場合には,設定(例えば,どの $\mathbb{Z}_p$ 拡大を考えるかなど)によって振る舞いが大きく異なり,未だ理解が完全とは言えない.本講演では,非通常的な場合の反円分 $\mathbb{Z}_p$ 拡大における CM 楕円曲線の Tate–Shafarevich 群の振る舞いに関して得られた研究成果について報告する (Ashay Burungale 氏(テキサス大学オースティン校)と小林真一氏(九州大学)との共同研究).
A Proof of Ferrero–Washington’s Theorem by Sinnott (Ⅱ)
小林 大晟 (東京理科大学)
Sinnott は $p$ 進測度の $\Gamma$-変換に着目し,$\Gamma$-変換の $\mu$-不変量を記述する結果を証明した.この結果は,Ferrero–Washington の定理の証明の鍵である.本講演では,8/3 の岩澤氏の講演に引き続いて,$\Gamma$-変換の基本的な性質を概説する.続いて,ある $p$ 進測度の $\Gamma$-変換として $p$ 進 $L$ 関数が現れることを説明し,この事実と Sinnott の結果を用いた Ferrero–Washington の定理の別証明を紹介する.最後に,Sinnott の結果の証明を解説する.
A difference formula of p-adic height pairings via the Bloch–Kato logarithm map
椎井 亮太 (九州大学)
$p$-進高さペアリングは Birch and Swinnerton-Dyer 予想の $p$-進類似の定式化を $1$ つの動機として研究されてきた.$p$-進高さペアリングは標準的に定まるものではなく,依存するものの $1$ つに de Rham コホモロジーの Hodge フィルトレーションの切断がある.例えば,楕円曲線の de Rham コホモロジー上の Hodge フィルトレーションの $2$ つの切断からそれぞれ定まる $p$-進高さペアリングの差は, Néron 微分形式に付随する対数写像を用いて記述できる. この公式から $p$-進高さペアリングの非自明性や Perrin-Riou 予想への応用が得られることも知られている.
今回,より一般のシンプレクティックかつ自己双対な2次元 $p$-進 Galois 表現 $V$ に対し,とある $2$ つの切断から定まる Zarhin–Nekovář の $p$-進高さペアリングの差を Bloch–Kato の対数写像によって記述する公式を得ることができた. また,局所化写像 $H^{1}_{f}(\mathbb{Q}, V) \to H^{1}_{f}(\mathbb{Q}_{p}, V)$ が全射であると仮定すると, この公式から $p$-進高さペアリングの非自明性を得ることができた. 本講演では,これらの結果の背景と証明のアイデアについて述べる.本研究は足立大雅氏 (九州大学),片桐宥氏 (九州大学) との共同研究である.
Shanks 多項式に付随するイデアル類群と 2–Selmer 群の関係
末吉 翔真 (九州大学)
Shanks 多項式は有理数体上の任意の $3$ 次巡回拡大を生成する生成的多項式として知られている.本講演では,その分解体のイデアル類群の $2$-ランクと,その多項式が定義する楕円曲線の $2$-Selmer 群の次元の間に成り立つ関係式を紹介する.また,本研究が Washington による先行研究の拡張になっていることを具体的な計算例を交えながら解説する.
代数体の円分 ℤp 拡大上の馴分岐副 p 拡大について(概説)
水澤 靖 (立教大学; 1日目)
代数体 $k$ の円分 $\mathbb{Z}_p$ 拡大体 $K$ の最大 $S$ 外不分岐副 $p$ 拡大 $K_S$ を考えます.この $S$ は $k$ の素点の有限集合で,$p$ 上の素点は含まないとします.$\mathrm{Gal}(K_S/K)$ のアーベル商が $K$ 上の馴分岐岩澤加群であり,$\mathrm{Gal}(K_S/K)$ 自身も非アーベル岩澤理論の研究対象です.$k$ を基礎体とした $\mathrm{Gal}(K_S/k)$ も、「円分的分岐」副 $p$ ガロア群として研究されています.これらに関連する話題や課題について,概観したいと思います.
岩澤加群の自明性と代数体のまつわり数
水澤 靖 (立教大学; 2日目)
岡野恵司氏(都留文科大学)との共同研究です.代数体 $k$ の最大自由アーベル副 $p$ 拡大 $k$ 上の不分岐岩澤加群 $X$ は,$k$ の最大不分岐アーベル副 $p$ 拡大のガロア群として定義されます.$p$ が完全分解する CM 体 $k$ に対して,$X$ が自明である必要十分条件が岡野氏の先行研究において与えられています.この共同研究では,円分的分岐副 $p$ ガロア群 $\mathrm{Gal}(K_S/k)$ の Koch 型群表示(に現れる「まつわり数」)から,その部分商である $X$ の自明性を記述します.概説を交えてお話ししたいと思います.
与えられた階数をもつ楕円曲線の存在に関する最近の発展
宮崎 雅哉 (九州大学)
2025年,Zywina は有理数体上で階数がちょうど $2$ である楕円曲線が無限に存在することを示した.講演者はその手法を応用して,階数がちょうど $2$で,さらに指定した奇素数を悪い還元にもつ有理数体上の楕円曲線の存在を示したので紹介する.
また,Zywina は 2026 年に,彼自身の手法を拡張し,任意の代数体 $K$ と $0\leq r\leq 4$ を満たす任意の整数 $r$ に対し,階数がちょうど $r$ の $K$ 上の楕円曲線が無限に存在することを示した.その証明のアイデアについても述べる.
p 進素点と一般 Greenberg 予想
栁澤 拓也 (東京理科大学)
代数体の古典的な岩澤理論において,一般 Greenberg 予想と呼ばれる予想が研究されている.この予想は,代数体の最大多重 $\mathbb{Z}_p$ 拡大の不分岐岩澤加群は擬零であろうという予想であるが,成立を示唆するような理論的な裏付けは少ない.一方で,予想が成立するような実例を与える研究はこれまで続いてきている.本講演では,基礎体の $p$ 進素点の選択という観点から,これまでの研究を統一的に扱う枠組みを考察し,その帰結として新たな実例を与える結果を紹介する.特に,虚 $2$ 次体上の Abel 拡大や,複素素点を唯一つもつような代数体で実例が構成できることを説明する.