- 合同数 :
3辺の長さが全て有理数であるような直角3角形の面積となるような自然数を合同数という.
例えば3辺の長さが 3,4,5 となる3角形があるので, その面積である 6 は合同数.
数式で書けば, a2+b2=c2 を満たす有理数 a,b,c を
使って ab/2 と表される自然数のこと.
- 楕円曲線 :
y2=x3+Ax+B という形の方程式が定める平面上の曲線で(A,Bは定数),
右辺の x についての3次式が重根を持たないようなものを楕円曲線という.
(例えば y2=x3+1 は楕円曲線であるが,
y2=x3-3x+2 は右辺が重根(x=1)を持つので楕円曲線ではない.)
実際には「無限遠点」を付け加えて「射影化」したものを扱う.
(いい加減な説明: x=0/0, y=1/0 と置いて楕円曲線の方程式に形式的に代入し,
両辺に 03 を掛けて分母を払ってしまえば 0=0 となるので,
(x,y)=(0/0,1/0) は曲線上の点とみなせる. これが無限遠点.
ちなみに (0/0,2/0) などもやはり曲線上の点とみなせるのであるが,
約分すれば 2/0=1/0 となるから, これは (0/0,1/0) と同じ点.)
- Mordell-Weil群 :
楕円曲線 y2=x3+Ax+B 上の2点(x1,y1),
(x2,y2)を通る直線は, もとの楕円曲線ともう1点
(x3,y3)で交わる.
実際, 直線の方程式を y=px+q として楕円曲線の方程式に代入すると x の3次方程式となり,
それは一般に3つの解を持つ.
ただし重解を持つときは重複度も考えて同じ点となることを許すこととし,
逆に最初の2点が同じ点のときにはその点での楕円曲線の接線を考えることとする.
(直線の方程式が x=r となるときは無限遠点と交わると考える.)
この操作により, 楕円曲線上の1つ(もしくは複数)の点から次々と
新しい点を作ることが出来る.
(重解となるときや無限遠点が出てくる場合など, 新しい点とはならない場合もある.)
この操作(を少しねじったもの)は, 楕円曲線上の点の「足し算」であるとみなすことが出来る.
実際, 上の記号のもとで
(x1,y1)+(x2,y2)
= (x3,-y3)
と定めると, この + は楕円曲線上の2点に同じ楕円曲線上の1点を対応させる演算であり,
更に普通の数の足し算が満たす性質, 例えば p+q=q+p や (p+q)+r=p+(q+r) などを
満たすことが確かめられるのである. (数の足し算における 0 にあたるものが無限遠点.)
「足し算」を持つ集合は「アーベル群」と呼ばれるが, 今定めた演算は
楕円曲線上の点の集合にアーベル群としての構造を与えていることになる.
(ただし, 普通の整数などの足し算では p が 0 でなければ p+p も 0 ではないが,
今考えた足し算ではそれが必ずしも成り立たないことに注意.
例えば y=x3-x という楕円曲線上の点 P=(0,0) での接線は x=0 という直線なので,
P+P は無限遠点となってしまう.)
更に A,B が有理数であるような楕円曲線(有理数体上の楕円曲線と呼ばれる)を考えるとき,
もしその楕円曲線上の2点 P=(x1,y1), Q=(x2,y2) の
x,y座標が全て有理数ならば P+Q=(x3,-y3) の座標も
やはり有理数となることが確かめられる.
つまりそのような場合, 楕円曲線上の点で座標が有理数であるようなもの全体の集合は
演算 + について閉じており, やはりアーベル群とみなせるのである.
このアーベル群のことをその楕円曲線の(有理数体上の) Mordell-Weil群と呼ぶ.
(演算を忘れてしまえば, 楕円曲線を定める方程式の有理数解全体に
無限遠点と呼ばれる1点を追加した集合のこと.)
Mordellが最初に証明した重要な性質として, 有理数体上の楕円曲線のMordell-Weil群は
有限生成アーベル群である, 即ち, 座標が有理数であるような楕円曲線上の点は,
そのうちの有限個から出発して + という演算で次々に点を作っていくことで尽くされる,
ということが知られている.
(後にWeilがこの結果をより広く一般化したためMordell-Weilの定理と呼ばれる.)
- 合同数と楕円曲線の関係 :
3辺の長さが有理数 a,b,c (a< b< c) で面積が n の直角3角形が与えられたとき,
x=c2/4, y=(b2-a2)c/8 と置けば,
y2=x3-n2x が成り立つ.
逆に y2=x3-n2x を満たす有理数 x, y で y≠0 なるものが
与えられたとき, u=|x2+2nx-n2|, v=|x2-2nx-n2| と
置いて, a=(u-v)/(2|y|), b=(u+v)/(2|y|), c=(x2+n2)/|y| と置けば,
a2+b2=c2 かつ n=ab/2 となる.
もし x, x+n, x-n が全て平方数ならば, a=√(x+n)-√(x-n), b=√(x+n)+√(x-n), c=2√x と
置いても良い.
- Birch, Swinnerton-Dyer予想
- parity予想
- Tunnellのアルゴリズム