メディア・ジャミング7
マスコミが伝えない、DVと薬物依存をめぐるホンネトーク
〜安全な場所と出会いをどうつくる?〜

日 程
講 師
形 式
会 場
対 象
5/6(金) 16:30〜18:00
仲村 久代 さん(サバイバルネット・ライフ代表) 五十公野 理恵子 さん(ダルク女性ハウススタッフ)
一般公開
津田塾大学 小平キャンパス H202(コラボラティブ・ラボ)
学生・一般
 
講師プロフィール
仲村久代
特定非営利活動法人サバイバルネット・ライフ代表(DV被害の女性や子どもたちのための支援団体)
<プロフィール>
1948年 東京都出身 夫の転勤で栃木県へ転入
1996年 仲間数名で宇都宮市にシェルターを立ち上げ10年間活動
2006年 小山市でサバイバルネット・ライフを設立、代表となる。
「女性と子どもの人権を守る」という視点で、誰もが住みたい場所で、住みたい人と安全に、安心して、暮らせる社会の実現を目指して活動している。

五十公野 理恵子
特定非営利活動法人ダルク女性ハウス当事者スタッフ(薬物依存者の回復施設)
<プロフィール>
1971年 東京都出身
2006年 ダルク女性ハウス当事者スタッフ
2009年 津田塾大学 ソーシャル・メディア・センタースタッフ
関連イベント&次回予告!
5/6(金)12:00〜16:00 オープンカフェ開催!
センターの活動についての質問や自主企画など、センタースタッフに何でも相談してください。センターの活動記録も見れちゃます。お気軽に!!

次回予告
6/24(金)16:30〜18:00 メディア・ジャミング8 「えんげきとかアートとか 〜繋いだ先に何があるか〜」
講師:吉野さつきさん(アートマネージャー)柏木陽さん(演劇家)
メディア・ジャミング
Media Jamming とは?
津田塾大学のソーシャル・メディア・センターが、様々な社会的支援を必要とする「ニーズあるコミュニティ(communities in need)や、表現をめぐる団体・個人が一緒に、企画から運営までを行うプロジェクトです。異なるジャンルの表現者やコミュニティが、多様な表現方法を使ってジャミング(セッション)を行うことで、社会的課題や解決方法を具体的に考え、語りあい、新たな関係性を模索することを目指します。スタイルや方法は毎回異なりますが、講演者/聴衆という固定された立場ではなく、参加者自らが能動的に参加できるワークショップ形式を取り入れます。基本的に一般公開ですが、テーマによっては特定のコミュニティに限定することもあり、ワークショップの「デリバリー(出前)」を行うこともあります。
このイベントのチラシをダウンロード
DATE:2011.12.08
講演概要
 今回のメディア・ジャミング7は、NPO法人サバイバルネット・ライフの仲村さんとNPO法人ダルク女性ハウスのスタッフであり、当ソーシャル・メディア・センターのスタッフでもある五十公野さんを講師にお迎えし、DVと薬物依存についてのマスコミの報道によってもたらされる一方的なイメージと実際の現場とのギャップについて、さらには「安全な場とは何か?」というテーマで対談をしていただきました。参加者の方にも自由に質問していただきながら、お二人の話は進みました。
メディアの伝えるDVと薬物依存
仲村
 長澤まさみ主演の「ラストフレンズ」というデートDVが主題のドラマを見て私は、「それはないだろう」と言いたくなりました。このドラマを見ると、血みどろになるのがデートDVだと思ってしまって、デートDVを実際に受けている人100人のうち97人は、「私はデートDVじゃないわ」と勘違いします。デートDVを受けている人は世の中にほとんどいないのではないかという誤解を生じかねません。 デートDVで一番つらいのは彼氏からのコントロールなんです。例えば、帰る時間が10分遅れただけで、なぜ10分遅れたんだと、なぜ約束が守れないんだと言われる。男友達の携帯番号をすべて消去される。嫌なのに性行為を強要される。こういうことはなかなか言えない。恋愛の苦しさと彼氏からコントロールされるデートDVの苦しさを履き違えているんです。

五十公野
 メディアが作り上げるイメージの影響で、薬物依存症の人たちに対して、世間だと怖い人とか、犯罪者とか、意志の弱い人というイメージがあると思うんですが、実際は違います。実際は多くの女性たちは暴力の被害者だったり、薬物を若い頃から使わざるをえなかった状況にあった人たちなんです。 芸能人の薬物事件報道のときには、ダルク女性ハウスが女性の薬物依存回復施設だということで、メディアからのインタビューの依頼がたくさんくることがあり、以前1件だけ取材を受けたことがありました。そのインタビューで、自分が社会に伝えたいことと、メディア側が社会に伝えたいこととの間にすごくギャップがあることに気づきました。自分が言いたいことと違うことを質問されたあげく、つっこまれるし、どこまで答えていいのか分からなかった。カメラが回っているから、もう話せませんと言ってはいけないような気がして、インタビュアーが期待する答えに誘導するような質問にしかたなく答えていくような感じになっていきました。そこに施設長が現れて、「なんかそのインタビューのしかたはひどくない?」と言っていただいて、やっとカメラが止まりました。いったんは放送されるのを断りましたが、断りきれず、この部分とこの部分だったらいいですとOKしてしまいました。実際に流れた放送をみると、冒頭に、踏切のカーン、カーンという音が入っていたり、覚醒剤と注射器のイメージ映像がでてきたり。伝えたいことがなかなか伝わらないなとすごく思いました。 ダルク女性ハウスは2009年に『Don’t you? わたしもだよ』という当事者研究の著書を発行しました。この本を通し、メディアが伝える薬物依存症の人たちのイメージと実際とは違うんだよということを伝えかった。今はメディアに正しい報道を期待するよりも、自分たちが発信していくことのほうが大事だなあと思います。

会場からの質問
 薬物依存症のことやDVの問題についてメディアの報道のしかたで残念だなと思ったことや、広告に関してもう少し違う伝え方があるんじゃないかと思ったことがあれば教えてください。

五十公野
 「ダメ。ゼッタイ。」という薬物乱用防止のポスターが街角に貼られています。使っていない人たちに対して、薬物は怖いとか、薬物を使うと人間だめになっちゃうんだというのが伝わるから、必要なところもあると思います。だけど使ってしまった人にとっては、あのポスターを見ると自分がすごく排除されちゃう感じがする。だから一方で「使っちゃった人はどうすればいいの?」というポスターも街中に「ダメ。ゼッタイ。」のポスターと同じくらいあったほうがいいんじゃないかと思います。

仲村
 いろんな切り口でDVの犯罪のことがメディアに出ますが、例えば、「酒に酔った夫が」という表現をはっきり「DVの夫が」と書いてほしいと思います。そうするとDVがどんなに多いかが分かるのに、どうしても「酒に酔った夫が」になってしまう。DV防止法という法律ができたのに、まだ犯罪だと思ってないんですよね。メディアで犯罪なんだと正していってほしい。
安全な場とは
五十公野
 ダルクにつながる[1]ような人たちは「安全な場」というのが分からない。なぜならそれまでの人生の中で「安全な場」を経験してこなかったから。だから具体的に、薬物を使っていたときの場所を通らないほうがいいよ、そのときにつきあっていた人たちに電話しないほうがいいよ、こういうときはフラッシュバック[2]がおきちゃうけど大丈夫だよと教えてあげる人が必要なんです。ダルクではそういう人のことを「先ゆく仲間」と呼びます。自分は「先ゆく仲間」であって、困っている人の話を聞いたり、どういうところに行くと危ないよとか、こういうときはフラッシュバックが起きちゃうけど大丈夫だよとか。フラッシュバックが起きたときに自分がやってみてよかったことを、新たにダルクに来る人たちに伝えていく。それが私の仕事だと思ってスタッフをしています。

仲村
 そこは今はあなたにとっては「安全な場」なんですね。

五十公野
 そうですね。

[1]「つながる」→治療や相談機関、回復のプログラムに出会うこと
[2]「フラッシュバック」→薬物を使っていた頃の感覚に引き戻される、過去の暴力や虐待の記憶がよみがえり、引き戻されること
ソーシャル・メディア・センターと出会う
仲村
 DV被害を受けた女性たちは、ほんとうにジェットコースターに乗ったような毎日を生きている。お母さんと子どもは何一つ持たずに逃げてくる。友人宅や実家に逃げてもそこに夫が刃物を持って追いかけてくると、周りのみんなに避けられるようになっていく。経済的だけでなく、関係性も貧困になり、シェルターしか頼るところがなくなる。だからここを実家と呼ぶ。
 そういう中で子どもたちは必要な愛情を受けることができなかったり、しつけを受けることができなかったりする。関係性がとても貧困で、親以外に支える人がいない。支援を必要としている人になかなか支援の手が回ってこないのが現状です。私たちも一生懸命頑張ってきたけれどなかなか大変。そういうときに、津田塾大学ソーシャル・メディア・センターの活動に出会いました。3年間の関わりを通して、子どもたちが本当に変わっていきました。刺すような目つきで、口も聞かなかった子どもたちがとても柔和な目になった。大学に行くことを夢にも思わなかった子が大学へ行きたいと言ったことが希望の光に思えました。家族の中の誰か一人が変わるということが家族に大きな変化をもたらす。家族がだんだんとゆるんでくる。どの家族もそうでした。確実に変化がありました。
表現する
五十公野
 ダルクではグループミーティングが主なプログラムで、その中で言葉で表現します。自分が今どう感じているのか。自分の経験を話したり、仲間の話を聞いたりして、経験した体験を分かち合うことをします。もともと私たちって自分を表現することは苦手だし、自分の感情も分からない。ミーティングの中で自分の感情をなるべく言葉にし、自分の感情に少しずつ名前をつけていく作業をします。  ソーシャル・メディア・センターのワークショップには2年前くらいから関わっていますが、自分にとっては表現するってこんなに幅が広いんだなっていうことに気づかされました。表現って自由でいいんだって思えました。自分が子どものときから認めてもらったことがなかったし、人に評価されるのが嫌だから、美術の授業も受けずにきています。ソーシャル・メディア・センターのワークショップではとくに評価されるわけではなくて、自分の経験したことがないことをしたり、ダルク女性ハウスの母子たちもこれに参加させてもらっているわけですけれども、みんなもすごく楽しんでいます。

仲村
 ソーシャル・メディア・センターのワークショップの中では自分がそのままでいられることが保証されるんです。そのことが子どもたちにはすごく大切です。等身大でいられる場所があることは子どもたちにとってすごく「安全な場」であり、ソーシャル・メディア・センターのワークショップの場ではそれがとても行きとどいているので、子どもたちは参加することをすごく楽しみにしています。またワークショップに参加することで、いろんな人に出会い、いろんな価値観に出会うということになり、子どもたちにとってとてもいい経験になっているなと思っています。
Honest Talk about DV and Drug Addiction

―We Never Know It through the Mass Media
〜How Are We to Have “a Safe Place” and Meet People?

Talkers: Hisayo Nakamura (Survival Net Life)
Rieko Izumino(WOMEN'S DARC)

Nakamura: When I saw a TV drama with a dating violence theme Last Friends, starting Masami Nagasawa, I almost wanted to shout, “This is not the case!” People who saw this drama probably thought that dating violence would usually involve violent bloody scenes. Therefore, we can assume more than 90 % of the viewers of the program thought that their cases were not dating violence, or they were not the victives of dating violence. A TV drama like that is likely to bring about misunderstanding that dating violence is something only a few people are suffering from. The worst part of dating violence is to be controlled by a boy friend. When you are only ten minutes late for an appointment, you will be reprimanded severely, and compelled to tell him the reason. All the phone numbers of your male friends will be erased from your cell phone. And you will be pressured into having a sex with him even though you do not feel like it. It is hardly possible for you to tell these things to other people. There is a great difference between worries about love and the pain of dating DV in which you are always controlled by your boy friend.

Izumino: Influenced by the bad images of drug addicts made by the media, people tend to regard them as horrible persons, criminals, or week-willed persons. However, it is not true. The truth is that many of the female drug addicts are the victims of violence or those who had to use drug early in their lives. When a popular TV star was arrested for drug use a few years ago, we had many requests for an interview from the media, and I accepted just one interview. While being interviewed, I realized that there was a big gap between what the media wanted to tell and what we wanted to tell. They asked me about what I did not want to discuss. They were very persistent in making me answer questions and I did not know how to answer about some of the questions. Because a video camera was shooting the interview, I thought it difficult to say that I would not answer any more questions. It was like I was made to answer only the questions the media wanted to take up so that they could make a story they wanted. After the interview, I refused to permit them to broadcast my interview, but finally I gave unwilling consent to their request, choosing several parts for TV broadcasting. In the TV program which showed my interview, I found too many dramatic effects such as the sound of a bell at a railroad crossing, and the images of a stimulant drug and a hypodermic syringe. I realized that it was not easy to convey a correct message to viewers. DARC(Drug Addiction Rehabilitation Center) Women’s House published a book entitled Don’t You? Me Neither in 2009, which describes the lives of people who experienced drug use. Through this book we tried to tell people about the true condition of drug addicts which is quite different from the images created by the media. Now I think it is more important to send out a message to society than to expect the media to give a correct report about the drug issues.

Questions from the floor:If you have ever felt bad about the way the media report the problems of drug addiction and DV, please tell us in more detail.

Izumino:You will see posters for anti-drug use campaign on street corners saying “Don’t do it. Never.” Of course it is useful to make that kind of posters, for they help to warn people of the danger and dread of drug use. However, those who have used drug before, feel excluded from society when they see that poster. Therefore, we also need to put up posters for people who have already used drug, which suggest what they do after they become a drug addict.

Nakamura:The media are reporting DV crimes in various expressions. For instance, we often see a description like “a drunk husband” in a newspaper, but it is actually a DV husband. I really hope the media use a direct expression like “a DV husband” so that people will understand how many DV crimes there are! Even though anti-DV act was enacted, many people are still not considering DV acts as crimes. I think the media should declare that DV acts are crimes.

What is a “Safe Place”
Izumino:People who get together at DARC have no idea about a “safe place,” because they have never seen a “safe place” in their life. Therefore, they need a person who is able to give them suggestions like these: You should keep away from the place where you lived when using drugs; you should avoid calling up the people you were associating with when using drugs; you have a flashback in such a case, but you don’t have to worry, it’s OK. At DARC we call such a person “a preceding companion.” I am trying to play the role of “a preceding companion” at DARC; I listen to the stories of people who are in trouble, advise them to keep away from a dangerous place, and tell them how I succeeded in overcoming a flashback. I am working as a staff member of DARC, thinking of myself as a guide for people who come to DARC for help.

Nakamura:DARC is “a safe place” for you now.

Izumino:Yes, it is.
Meeting “Center for Media,Culture,and Collaborative Learning”
Nakamura: Women who are suffering from DV are spending a day with a bewildering rapidity as if they were riding on a roller-coaster. A mother and a child come escaping from their home with no food, no money, no clothes--nothing. Even though they escape to their friend’s house or their parents’, her husband comes after them, until people around finally come to avoid them. They become poor financially, but their human relations also become poor. A shelter becomes the only place they can go back to, and they call it “home.”

In a life like this, children are not able to receive adequate parents’ love or learn manners from them, either. Their human relations are so poor that there is nobody but their mother they can rely on. We often find it hard to give aid to people who are really in need. We were trying our best but our work was not progressing easily, when we met “Center for Media,Culture,and Collaborative Learning” of Tsuda College. During our program with CMCCL for three years children have made a great change. A fierce-looking child, who never spoke a word before, has come to have a tender look. A boy, who never dreamed going to college, began to say that he wanted to study at college, which seemed to be a light of hope for the family. When someone in a family changes, it brings a great change to the whole family. A family gradually begins to relax. Every family did so. We were able to find definite changes.
To Express Ourselves
Izumino: Group meetings are our main programs at DARC. In group meetings we try to express ourselves in words. We talk to each other what we are thinking, talk about our experiences, listen to our friends’ stories, and share our experiences. We are by nature not good at expressing ourselves, and do not know how to express our feeling. In our meetings, we do the work of describing my feelings in words and giving them names step by step. I have been participation in the workshops at CMCCL for two years, and through my activities at CMCCL workshops I was made to realize how wide and deep expressions are. There are no restrictions on expressions. I have never been approved of since I was a child, and because I do not like to be evaluated, I have never taken art courses at school so far. At CMCCL workshops we are not evaluated, and we just give performances or do exercise, which I have never experienced before. Mothers and children at DARC Women’s House are participating in this program, and everyone is enjoying it.

Nakamura:At CMCCL workshops we are able to be our own selves, and it is very important for out children. CMCCL workshops offer “a safe place,” where children are able to show their true selves. Consequently children look forward to taking part in the next event at CMCCL. They meet various people and various values at CMCCL, which is quite an important experience for the children.