メディア・ジャミング3
『問題』ってなに?
ソーシャルワークの観点から考える
日 程
講 師
形 式
会 場
対 象
2010年6月18日(金)18:00〜20:00
山下英三郎氏(日本社会事業大学教授/日本スクールソーシャルワーク協会会長)
ワークショップ・一般公開 申込不要
小平キャンパス 交流館2階
学生・一般
 
イベント内容のご紹介
私たちは日頃、「問題」という言葉を深く考えることもなく何気なく用いているが、問題という事象は、時代や状況などによってとらえ方が異なる。今回のジャミングでは、常に「問題」がある状況に関与するソーシャルワークの立場から「問題」について取り上げ、共に考えることとする。
講師プロフィール
1946年長崎市生まれ。
1985年よりわが国で初めてスクールソーシャルワークの実践活動に従事した後、1997年から日本社会事業大学の教員となる。
現在、同大学社会福祉学部教授。日本スクールソーシャルワーク協会会長。
1999年からは、モンゴルに赴き児童支援のための活動も続けている。
メディア・ジャミングについて
津田塾大学のソーシャル・メディア・センターが、様々な社会的支援を必要とする「ニーズあるコミュニティ(communities in needs)」や、表現をめぐる団体・個人が一緒に、企画から運営までを行うプロジェクトです。異なるジャンルの表現者やコミュニティが、多様な表現方法を使ってジャミング(セッション)を行うことで、社会的課題や解決方法を具体的に考え、語り合い、新たな関係性を模索することを目指します。スタイルや方法は毎回異なりますが、講演者/聴衆という固定された立場ではなく、参加者自らが能動的に参加できるワークショップ形式を取り入れます。基本的には一般公開ですが、テーマによっては特定のコミュニティに限定することもあり、ワークショップの「デリバリー(出前)」を行うこともあります。
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DATE:2011.4.23
講演概要
 日本社会事業大学教授で、日本スクールソーシャルワーク協会会長の山下英三郎氏を講師にお迎えし、第一部では、ソーシャルワークという領域での問題のとらえ方・対処のしかたについてお話をしていただきました。第二部では山下ゼミの大学院生にコーディネーターをつとめていただき、グループワークを行いました。
ソーシャルワーカーという仕事
 ソーシャルワークという仕事は、人が何らかの問題を抱えている状況に関与し、その問題を少しでも軽減していこうとする仕事です。世の中には様々な問題が存在します。社会福祉の仕事はこうした問題を解決・改善する枠組み、つまり法律や制度を作ることです。一方、実際にそれらの法律や制度を活用し、問題の解決を図る仕事がソーシャルワークです。私はこれまでソーシャルワーカーとして不登校や行動上の問題を抱えている子どもたち、その家族・地域とかかわり、少しでも子どもたちが生きやすい環境を作る仕事をしてきました。
ソーシャルワークにおける問題のとらえ方
 問題が生じた時に、私たちはどうしても問題を抱える個人に焦点を当ててしまいます。問題の要因を個人に還元してしまい、その個人さえ変われば問題は解決するという考え方になりがちです。ソーシャルワークでは「人と環境の交互交流」に焦点を当てます。ここで言う「環境」とは、家族、友人、住環境、地区環境などあらゆるものをさします。交互交流とは、問題を抱える人とその周りの環境がお互いに循環的に交流し、お互いに影響を与え与えられている関係を意味します。この交互交流の関係が安定していれば人は安定した生活を送ることができます。ソーシャルワークでは、この交互交流がうまくいかなくなった状況を「不適合状態」と呼び、その状態こそが問題だととらえます。
 つまりAさんとBさんの関係が適合状態にないことが問題だと考えます。例えば私が関わっている不登校の問題では、「子どもの我慢が足りないから、もしくは、子どもが未熟だから起こる」と考えるのではなく、その子どもと学校という環境との間の折り合いがよくないから不登校の問題が起こるととらえるわけです。
不適合状態への対処のしかた
 ソーシャルワークでは、人を「エンパワー」したり、「環境調整」したりすることで不適合状態に対処します。人は自らの力が高まることで環境との適合状態を作り出すことが可能になります。一方、人がいくらエンパワーされても、環境自体が強大な力をもっていると、不適合状態は改善されません。その場合には第2の対処法である「環境調整」が大事になります。例えば子どもの虐待の問題では、子どもとその親の間に圧倒的な力の差が存在します。その場合には環境としての親に働きかけて暴力を振るわないようにしたり、ネグレクトをしないように「環境調整」することを考えます。
 ソーシャルワークにおいて、人と環境の不適合部分に介入する方法としては、個人を対象に行う個別援助(ケースワーク)と集団を対象に行う集団援助(グループワーク)があります。具体的には、調整、仲介、連携、代弁(力関係が圧倒的に違うときや身体が動かないときに、代わりに発言したり、行動すること)、情報提供、資源開発(問題解決のために物的・人的資源を既存のものから発掘ないしは活用すること、もしくは新たに開発すること)という方法で介入します。
「孤立」から「支え」へ
 人は問題を抱えないで生きていくことはありえないと思います。むしろ問題をどのように体験するかということが問われている。体験のしかたがつねにマイナスになるわけではなく、むしろプラスになることもある。よくこういう言い方がされます。あんな大変なことがあったからこそ今の自分があるのだと。
 問題はそのまま置いておき、むしろ問題を抱える個人の世界を広げるほうが、よい状態に導きやすいと私は考えます。人との交流を広げたり、知識を広げたりする。結果的に自分の世界が広がったとすれば、問題は依然としてあるけれども、全体の中でその問題は相対的にそんなに重くなくなるかもしれません。問題があってもよいと思う理由の1つとしては、人は他者が抱えている問題を自分の抱える問題として反応することができるので、その反応が他者に対する共感や思いやりや優しさになっていくと思うからです。自分が抱える問題が人と人をつなげるエネルギーになっていくと思います。
 生じた問題をプラスの体験にする1つのキーワードは「支え」です。支えは専門家でなくてもいい。家族、友人、近隣の人、そういう人が自分のそばにいて、自分は孤立していない、見捨てられていないという感覚をもてることによって、生じた問題をプラスの体験に換えていくことが可能になると思います。逆に生じた問題をマイナスの体験ととらえるときは、孤立している状況です。「孤立」というのが問題を深刻化させるキーワードです。その孤立を防ぐことが大切です。
 マザー・テレサは、「人にとっての最大の不幸は誰からも必要とされていないと感じながら生きることです」と言っています。まさにそうではないかと思います。問題を抱えること自体が宝になり得る。それを大事にして人と接していく。そういう考え方をもつことが大事ではないかと思います。
Media Jamming 3: What is “a problem”?--from the viewpoint of Social Work
Lecturer: Eizaburo Yamashita
We had Prof. Eizaburo Yamashita of Japan College of Social Work as a lecturer, who is also the president of the Japan Society of Social Work. In Part I he talked about how to find and deal with a problem in social work. In Part II the participants did group work with Prof. Yamashita’s graduate students working as coordinators.
The role of a social worker
Social work is an attempt to take care of people having problems and reduce them. The role of social work is to make laws and systems by which to solve and improve problems. On the other hand, the role of a social worker is actually to solve problems, making use of those laws and systems. I myself have grappled with school phobic children, and struggled to make better conditions for them, cooperating with their families and communities.
Social workers’way of seeing problems
When a problem arises, we are likely to focus on an individual. We often think that an individual has the greatest responsibility for a problem. However, in social work we focus on the interactive situation between an individual and his/her circumstances. When this situation becomes unstable, a child has a problem, and it becomes necessary to improve it through social work activities. For instance, in a case of a child refusing to go to school, we do not think that the problem is caused by the child who is “impatient or immature,” but that the unstable situation between the child and his/her circumstances is causing it.
How to cope with an unstable situation
In social work we try to improve an unstable situation either by empowering a person or by adjusting circumstances. Our effort to empower a person sometimes turns out to be unsuccessful when the power of circumstances is too strong. A case of child abuse is a good example. As there is great difference in power between a child and a parent, we need to adjust circumstances so that a parent will not beat or neglect a child. Also in social work there are two different ways of support for a victim: case work, which is support for an individual and group work, which is support for people.
From isolation to relation
We cannot live without problems. Interestingly, however, we can turn a problem into an advantage; for instance, after we have experiencedin a problem, we come to understand others who have the same problem, and therefore we will have sympathy, consideration, and affection for others. A problem sometimes enables us to relate with others. What we need to overcome difficult situations is relation with others. If we can feel that we are not alone but related with family members, friends and neighbors, we are able to have a positive attitude toward life. Therefore isolation is our worst enemy. Maria Teresa made a statement to the effect that the worst misfortune for us is to live, feeling that nobody needs us. To have a problem itself can benefit us, as long as we are able to feel close to other people.