メディア・ジャミング1
「ドメスティック・バイオレンスを生き延びる」
日 程
講 師
対 象
形 式
会 場
2010年4月24日(土)13:00〜16:00
仲村久代さん(特定非営利活動法人サバイバルネット・ライフ代表)
津田塾生・教職員 一般の方
ワークショップ、一般公開 ※事前申込不要
津田塾大学小平キャンパス交流館2階
 
講師のプロフィール
1948年 東京都出身 夫の転勤で栃木県へ転入
1996年 仲間数名で宇都宮市にシェルターを立ち上げ10年間活動
2000年 小山市でサバイバルネット・ライフを設立 代表となる。
『女性と子供の人権を守る』という支店で、誰もが住みたい所で、住みたい人と、安全に安心して、暮らせる社会の実現を目指して活動している。
公職など
栃木県DV対策基本計画策定委員、栃木県女性自立支援センター整備懇談会委員、小山市男女共同参画審議会委員
小山氏DV対策基本計画策定懇話会委員、小山氏IT推進戦略策定委員会委員、NPO法人 人権センターとちぎ理事など
このイベントのチラシをダウンロード
DATE:2011.4.23
講演概要
 前半はNPO法人サバイバルネット・ライフ代表の仲村久代さんのお話を伺い、後半ではサークルになり、Q&A形式で講師と参加者の間で議論を深めていきました。前半では、サバイバルネット・ライフ設立の経緯、DVとは?DV被害の現状とその背景にある社会的制度の不備、大学との協働についてお話を伺いました。
NPO法人サバイバルネット・ライフ設立の経緯
 サバイバルネット・ライフはドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者のための緊急一次避難施設(シェルター)の運営を第1の仕事としています。私たちはDVという言葉が一般化される前からこの仕事に関わってきました。DV被害者は、自分の受けている被害について誰にも相談できない状態にあります。そういう時に血縁関係はなくとも、ずっと長い期間にDV被害者と関わっていく人びとが必要であるということ、また、DV被害者が生き延びていくために必要な支援をしていくことが非常に大切だと私は痛感し、このサバイバルネット・ライフという団体を立ち上げました。
 私はよく「とても尊い事をしていますね」と言われます。私自身は尊い事をしているとは思っていません。それよりも許せない!自分と同じ女性が虐待される、お腹を痛めて産んだ子供を虐待する、そしてそうしたDV被害者が苦しい目にあっているということが許せない。そんな小さな怒りの炎が燃え続けているだけです。
DVを他人事とは全く思っていません。いつ自分がその被害者となるかわからないし、自分の子供や孫が被害者となるかもしれない。自分自身にも関わる問題だと思って活動しています。DVは全て自分と関係のある社会の問題。個人的な問題は社会的な問題です。みなさんには、本当にそういう姿勢でDVやデートDV(後述)のことを考えていただけたら嬉しいと思います。
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは?
 みなさんDVという言葉はすでにご存知だと思います。DVは今に始まった事ではなくて、昔からずっとあったのですが、DVという言葉が日本にはなかったので、ないことにされていただけです。2001年にDV防止法ができました。この法律により、初めてDVが犯罪だと認識されたわけです。内閣府の調査では、4人に1人の女性が男性から身体的な暴力を受けています。10人に1人の女性が男性から継続的に暴力を受けています。さらに20人に1人の女性は命に関わるほどの暴力を受けているのです。
DVとはこうした継続的な身体的暴力だけではなく、言葉による精神的暴力、外出を禁じる・外出させないために車の鍵を取り上げてしまうなどの社会的暴力、お金を使わせないなどの経済的暴力も全てDVとみなされます。
シェルターの全国ネットワークの調査によると、DV家庭の中で子どもへの性暴力被害が確認できたのは6%にものぼります。これは大きな数字だと思います。さらに特徴的なのは低年齢の子供への性暴力被害です。性暴力被害を受けた子どものうち実に72%が0歳から14歳の子どもです。この数字は重く受けとめなければなりません。
みなさんはデートDVという言葉をご存知ですか?これもDVの一種です。私は県立高校生の相談も受けていますが、女子高校生もかなりデートDVを受けていることが判明しました。例えば、彼から「俺が会いたいって言ったらすぐ来いよ!」と言われて、彼女が彼のもとに行かないと、「何をやっていたんだ!」と叱責される。しかも朝から晩までの行動を全部報告させられて、なぜ来られなかったのか説明しろと言われる。そのため部活も一切できなくなります。その上、クラスの友達のメールも全部消せと言われ、その結果、自分が陥っている状況を相談できる友達もいなくなって孤立していくことになります。このように、「俺以外に誰とも付き合うな」と彼以外の人間関係を断ち切られていきます。こうした関係性の貧困は、デートDVに限らずDV被害者にとって大変大きな問題です。
 また経済的な貧困もDV被害者にとって大きな問題です。母親の貧困はすなわち子どもの貧困になります。例えば母子家庭の場合、学校に合格すれば授業料や学費が免除になるけれども、そもそも試験を受けるお金がない。ある地方自治体では3万円くらい借りることができるけれども、保証人がいないとそのお金さえ借りることができない。DVで逃げてきた先で保証人が得られるなど考えられません。つまり救済制度は確かに存在するけれども、使える制度ではないのです。社会的制度が不備なのです。本当にDV被害者の生活環境が分かっていれば、もう少しDV被害者にやさしい制度が作れるのにとつくづく思います。社会のこのような理不尽をぜひみなさんには知って頂きたいと思います。みなさんに知っていただけたら、今度はその理不尽な制度を変えることのできる人になってもらいたいと思います。政策決定の場にみなさんが出て行って、もっと女性たちが本当の意味で皆と対等になれるような権利を獲得できるようにいろんなところでみなさんに活躍して働いて欲しい。そうなるとおそらくDVはなくなると思います。
ドメスティック・バイオレンスを生き延びる
 私の役目の1つにアドボケイトするという役割があります。人間の尊厳を失ってしまいそうな時、その人の人権を守るために同行する=アドボケイトするということです。例えば夫婦間やパートナー間のDVによる被害届を警察に出しに行くとき、DV被害者の生活保護を申請する時、DV被害者への接近禁止命令を裁判所に申し立てに行くときなどに同行します。DV被害者であり、今は重い病気で仕事をすることもできないあるお母さんがおられました。この女性は、かつてそのDV被害がもとで離婚しており、1歳のときに別れた子どもがいました。生活保護を申請しようとしたときに、行政は、別れてからその後会ったこともない子どもに補助してもらうように頼めないのかといいました。それを聞いた彼女は手術もしないでいい、生活保護も要らない、このままでいいから別れた子供と夫に迷惑をかけたくないと言いました。そこで私は行政に説明に行き、事情を説明し、生活保護を出してもらいました。
 なかなかDV被害者の声は届かない。だから、政策決定の場にも、裁判官にも、女性たちがもっと進出してほしいし、女性の視点で法律とか制度をもう一度よく見直してほしいと思います。
大学と協働でワークショップをする意味
 私たちは現場の人間ですので、現場の事で手いっぱいです。こうやって大学などのワークショップに参加する機会を頂くと、私たちも本当に学ぶことがあるのですごく感謝していますし、こうした場でDVとかデートDVとか子供の虐待についてみなさんに知って頂く機会を頂けることは本当に嬉しいことです。
 また他の団体と私たちの団体とが恊働してプログラムを実施する時には、子供たちはものすごく勉強する機会を得る事ができます。そしてそれが自信につながっていきます。子どもたちは、誰かが自分のために待っていてくれて、同じ時間を過ごしてくれるという事がありませんでした。だから例えば、津田塾大学でワークショップを開催した際に、大学の食堂でおにぎりを用意してくださった。子どもたちは、そんな事がものすごく嬉しかったと思います。そういう経験がないのです。祖父母の家に行くこともないし、お年玉を貰うこともない。だから誰かが自分のためにご飯を用意してくれることにおそらくびっくりしたと思います。
 多くの子供たちは大学に行きたくても行けない。子供たちが初めて大学という所に入った時に、ある子どもが「わーすごいな大学って」「私大学に行ってみたい」と言ったんです。本当にその言葉を私は忘れられません。自分と大学との間にはものすごく距離があると考えていたのでしょう。それなのに大学に行くことができたということは、彼女たち彼らにとって、凄く大きな自信につながると思います。
Media Jamming 1: “Surviving Domestic Violence”
Lecturer: Hisayo Nakamura
1948 Born in Tokyo. Later moved to Tochigi Prefecture.
1996 Founded a shelter with several members in Utsunomiya.
2000 Founded Survival Net Life in Oyama, Tochigi Prefecture.
Lecture by Hihayo Nakamura
In 2001 Antidomestic Violence Law was enacted. With the enforcement of this law people came to recognize DV as a crime, although it has existed for a very long time. According to a survey conducted by the Cabinet, one out of four women has suffered physical violence from a man, and one out of ten women is continually being bodily abused. Moreover, one out of twenty is being abused so severely that she is in danger of death.
DV is not limited to such continual physical violence; there are various types of DV such as tormenting a partner mentally by words, forbidding a partner to leave home by taking a car key away, or financially troubling a partner by not permitting her to use any money.
Of course child abuse is a serious problem, too. According to one survey, in 6% of DV families sexual abuse was recognized. Especially we need to note sexual violence to small children. No less than 72% of victims of sexual abuse were children from 0 to 14 years old.
Have you ever heard of date DV? This is also one type of DV. I am working as a counselor for a prefectural high school, and I have found out that many high school girls are suffering what is called date DV. Their boy friends often ask them to come and see them. In such a case, if they refuse the request, their boy friends will reprimand them, saying “Why didn’t you come?” They are asked to report their every single act of the day and explain the reason they were not able to come. They find it hardly possible to communicate with other friends and find themselves isolated from interactive human relations. And it is because their boy friends never permit them to associate with other people.
Poverty is also a very serious problem for DV victims. In a fatherless family, if a child passes an entrance exam for a school, he/she will be exempted from school fees. However, the problem is that they are not able to pay the entrance exam fees. A certain city offers to lend a family in need some 30,000 yen, but they need to have a guarantor to apply for it. And it is often very difficult for a family escaping from a DV husband to find one. Indeed there are relief systems, but many of them are not quite usable. If city officers know more about the circumstances surrounding DV victims, they are surely able to plan a relief system more realistic and suitable to DV victims. I really hope you will understand social injustice around you, and study hard in order to change those ridiculous systems in Japanese society. If young women like you take part in the task of policy-making and realize a society where men and women are really equal, DV will disappear forever.

We are very happy to take part in a college workshop like this, where we can offer you a chance to know about DV, date DV, and child abuse. Also children, who are suffering domestic violence, have seldom been treated kindly by adults. Therefore, when they were given Onigiri, a rice ball, at a school cafeteria during the workshop, they were surprised and so happy. One girl said, “College is great, I want to go to college.” I will never forget her words. Until that day, college had been something in some far-off place for her. However, college suddenly seemed quite real and near to her, then. Both college students and children from a DV family learn a lot from a college workshop.